“FLMによるフィールドコーチング考察" コーチング上手のFLMと一般的なFLMの違いはなんだ その⑤ 「一回一回の面談の目標を最終目標に向かってStep by Stepで刻むことはありか?」
一般的なFLMは、MRとの同行において、顧客との面談の前に、その面談の目的・目標や、その際に使用する資材などを確認します。その際に、半年後や1年後までに、その医師の処方にどのように自社製品を組み込んでいただけるかを考えて、その目標についてMRと話して、今日の面談のゴールをおよそ決めます。
例えば、半年後、1年後には標準治療の第一選択薬として使用してもらいたいと考えているが、まだ1例の処方もいただけていないとしたら、とりあえず今日の面談では、現在の治療薬剤について情報収集することとして、次の面談で自社製品のベネフィットをお話しすることにしよう、とか。
それに対して、コーチング上手のFLMは、同行するMRが半年、1年後までにその医師の処方の標準治療薬として自社製品を第1選択薬として使用してもらいたいと考えている場合は、その日の面談の目標から、明日からの第一選択薬として自社製品をご処方いただくことを目標として今日の面談を行うことをMRと握ります。結果的にその目標には到達できなかったが、医師の治療方針については確認できたということはあるかと思いますが、最初から刻んだ目標設定をすることはありません。
MRの施設・医師プランを見ることがあります。おおかたのプランは半年の目標とアクションがそこには記載されているのですが、半年後にその目標に到達するためのアクションが月別に刻まれています。例えば、来月までに、医師の薬剤選択の考え方を聴取して、2ヶ月目に説明会を開催して、3ヶ月目にはWebセミナーに参加していただいて、4ヶ月目までに1例目の処方を確約して・・・などです。
一見この計画はリーズナブルで実行できそうに見えるのですが、おおよそ3ヶ月後にこのMRさんと面談して進捗を確認すると、まだ医師の薬剤選択の考え方が把握できていないので、その先に進めていないということがよくあります。その面談の中では、「説明会の予約だけは急いで取ります。」「Webセミナーの案内もしましたが、参加いただけるかどうかはまだわかりません。」というような言葉が返ってくることが多いです。
結局そのようなプランは絵に描いた餅であって、現実的な達成を目指すプランになっていない。ひどい時にはきれいにプランを書くことが目的になってしまっているようなこともあるようです。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?それは、施設・医師プランを立てた瞬間にMRさんの頭の中は、そもそもの最終目標がどこかに行ってしまって、アクション項目を行うことが目標になってしまっているからだと思われます。従って、個々の医師との面談の目標も、今日の面談の目標は、「医師の薬剤選択の考え方を確認することです。」とか、「説明会の予約を取ることです。」とか、そのような『刻んだ目標』になりがちなのです。
一般的なFLMは同行前の打ち合わせで、このような刻んだ面談目標をMRから聞いたときに「今季の施設・医師プラン」と合致している、あるいは少し遅れているところを取り返そうとしている、と考えてこの面談目標を良しとしてしまうことになります。
それに対して、コーチング上手のFLMは最終目標の「明日からの第一選択薬」を、その1回目の面談でコミットメントを取りに行くことをMRと握ります。たとえ、担当交代したばかりでその面談が初回であったとしても、そこを譲ることはありません。むしろ、初回面談の方が、過去の経緯などをゼロベースに戻せてやりやすいこともあるかと思います。
この話には、もう一つ重要なことがあります。それは、その担当している製品を1日も早くお届けしなければならない患者さんがいて、医師がその重要性に気がついていないとしたら、MRが面談の目標を刻むことは、すなわちその患者さんに不利益につながってしまっていることになりかねないということです。
あと、もう一つ、これはよく言われていることですが、ビジネスの観点から見ると、たとえ半年後に「第一選択薬」になっていたとしても、明日からそうなるのと半年後にそうなるのでは、この半年間の売り上げに大きな差があるわけです。
ですからたとえ半年後までに達成することをプランした目標であっても、FLMはMRに対して、その1回の面談で達成することを目標に、いわゆる“真剣勝負”を挑ませなければなりません。
コーチング上手のFLMは面談前の打ち合わせで、その面談の目標についてMRと話すとき、決して面談目標を細かく刻むことはしません。あくまでも半年後の医師の行動変容目標であっても、その日に達成することを目指してMRのコーチングを行います。