Blog #4 “FLMによるフィールドコーチング考察" コーチング上手のFLMと一般的なFLMの違いはなんだ その③ 「顧客との同行面談前にFLMがやらなければならないことの一番は何?」
一般的なFLMは面談前に伝えることと伝え方を項目で確認します。コーチング上手なFLMは相手が本当に納得し、行動変容のコミットメントにつながるかどうかをロールプレイで確認します。同行面談前の打ち合わせでロールプレイをやるかどうか?今回はこの違いについて考えてみましょう。
なぜか、未だにロールプレイやりましょうというと途端に面倒くさそうな表情を示すMRがいます。ロールプレイの威力をご存知ないのでしょうか?ロールプレイをやることが恥ずかしいのか?それとも単に面倒くさがりなのでしょうか?
コーチング上手なFLMは面談前のロールプレイの結果、医師役である自分がその話の内容や流れで本当に心の底からMRが目標とするクロージング内容に納得したかどうかを自ら問いかけます。ロールプレイの後で確認するのは、何を使って何を伝えられたかとか、データの説明は明確で正しかったかということももちろん大切ですが、それ以上に、会話を通じて、医師役としての患者さんに対する考えを引き出されたか? そしてロールプレイが終わった瞬間に、自分が医師であったら本当に納得して何か新しいことをMRと約束したか?を重視します。
つまり、同行面談前ロールプレイはリアリティーに基づく真剣勝負のシミュレーションなのです。このシミュレーションをやってみて、FLMが納得できなければ、実際の面談で医師の納得を手にいれることは難しいでしょう。したがって、何が納得できない理由であるかを話し合って、医師役として納得できるまでロールプレイをやり直します。
もちろん、FLMは本当の医師ではないので、実際に医師が患者治療を進める上での知識や情報量は十分ではありません。しかしながら、少なくとも、その知識や情報量に劣る相手ですら納得を得ることができるという確信がなければ、本当の医師との面談において相手の納得を得ることは覚束ないでしょう。本当の医師ではないので意味がないといってロールプレイを軽視する人もいますが、その一段低いレベルの面談で成功することができなければ、本番での結果は目に見えています。
長い間製薬企業の研修担当者は、上手に製品に関する各種の有効性や安全性を示すデータを医師に説明できるかどうかのロールプレイを指導してきました。このロールプレイ研修では、医師役が納得したかどうかではなく、MR役が漏れなく伝えるべきことを伝えたか、に照準が当てられていますので、必然的にあそこが伝え漏れたとか、あのデータの使い方が悪かったとか、どうしてもチェックリストに漏れた項目に対するネガディブなフィードバックばかりをやってきたように思います。このようなロールプレイが楽しいわけがなく、多くのMRのみなさんが後ろ向きになることは必然です。その結果冒頭に述べたように、どうしてもロールプレイというと、MRのみなさんからはあまり好ましい反応が返ってくることがないように思います。
しかしながら、コーチング上手のFLMのロールプレイは違います。そこで行われていることは、ロールプレイ研修ではなく、実際の面談を想定したシミュレーションワークなのです。したがって実施後には、成功・不成功を喜んだり、残念がったりする感覚が双方にあります。ロールプレイを通じてうまく医師役の納得と行動変容(処方)の約束を引き出せれば成功です。面談前のロールプレイ(シミュレーションワーク)で成功の擬似体験をしてから本番に臨むことは、その面談に臨むMRの自信にもつながりますので、必然的にクロージング成功の可能性は高まります。
一般的なFLMは面談前に伝えることと伝え方を項目で確認します。コーチング上手なFLMは相手が本当に納得し、行動変容のコミットメントにつながるかどうかをロールプレイで確認します。
医師との面談時間は以前にも増して限られてきています。その1回1回の面談は、MRにとっては、いち早く患者さんに最適な治療をお届けするための医師との真剣な議論の場です。せっかくの貴重な医師との面談時間を意味のある時間にし、その面談の成功の可能性を極限まで高めるためには、面談前のロールプレイ(シミュレーションワーク)の習慣化が大切です。